し》、末っ子だ。
夢のような黒い瞳《ひとみ》をあげて
じっと東の高原を見た。
楢ノ木大学士がもっとよく
四人を見ようと起き上ったら
俄《にわ》かにラクシャン第一子が
雷《かみなり》のように怒鳴《どな》り出した。
「何をぐずぐずしてるんだ。潰《つぶ》してしまえ。灼《や》いてしまえ。こなごなに砕《くだ》いてしまえ。早くやれっ。」
楢ノ木大学士はびっくりして
大急ぎで又横になり
いびきまでして寝たふりをし
そっと横目で見つづけた。
ところが今のどなり声は
大学士に云ったのでもなかったようだ。
なぜならラクシャン第一子は
やっぱり空へ向いたまま
素敵などなりを続けたのだ。
「全体何をぐずぐずしてるんだ。砕いちまえ、砕いちまえ、はね飛ばすんだ。はね飛ばすんだよ。火をどしゃどしゃ噴《ふ》くんだ。熔岩の用意っ。熔岩。早く。畜生《ちくしょう》。いつまでぐずぐずしてるんだ。熔岩、用意っ。もう二百万年たってるぞ。灰を降らせろ、灰を降らせろ。なぜ早く支度《したく》をしないか。」
しずかなラクシャン第三子が
兄をなだめて斯《こ》う云った。
「兄さん。少しおやすみなさい。こんなしずかな夕方じゃありませんか。」
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