楢ノ木大学士の野宿
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)家《うち》へ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)貝の火|兄弟《けいてい》商会
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#小書き片仮名ル、1−6−92]
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楢ノ木大学士は宝石学の専門だ。
ある晩大学士の小さな家《うち》へ、
「貝の火|兄弟《けいてい》商会」の、
赤鼻の支配人がやって来た。
「先生、ごく上等の蛋白石《たんぱくせき》の注文があるのですがどうでしょう、お探しをねがえませんでしょうか。もっともごくごく上等のやつをほしいのです。何せ相手がグリーンランドの途方《とほう》もない成金《なりきん》ですから、ありふれたものじゃなかなか承知しないんです。」
大学士は葉巻を横にくわえ、
雲母紙《うんもし》を張った天井《てんじょう》を、
斜《なな》めに見上げて聴《き》いていた。
「たびたびご迷惑《めいわく》で、まことに恐《おそ》れ入りますが、いかがなもんでございましょう。」
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