ょう》のうすあかりには、
山どもがのっきのっきと黒く立つ。
大学士は寝たままそれを眺《なが》め、
又ひとりごとを言い出した。
「ははあ、あいつらは岩頸《がんけい》だな。岩頸だ、岩頸だ。相違《そうい》ない。」
そこで大学士はいい気になって、
仰向《あおむ》けのまま手を振《ふ》って、
岩頸の講義をはじめ出した。
「諸君、手っ取り早く云《い》うならば、岩頸というのは、地殻《ちかく》から一寸《ちょっと》頸《くび》を出した太い岩石の棒である。その頸がすなわち一つの山である。ええ。一つの山である。ふん。どうしてそんな変なものができたというなら、そいつは蓋《けだ》し簡単だ。ええ、ここに一つの火山がある。熔岩《ようがん》を流す。その熔岩は地殻の深いところから太い棒になってのぼって来る。火山がだんだん衰《おとろ》えて、その腹の中まで冷えてしまう。熔岩の棒もかたまってしまう。それから火山は永い間に空気や水のために、だんだん崩《くず》れる。とうとう削《けず》られてへらされて、しまいには上の方がすっかり無くなって、前のかたまった熔岩の棒だけが、やっと残るというあんばいだ。この棒は大抵《たいてい》頸だけを出して
前へ
次へ
全42ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング