こでおれは探し出すつもりだったんだ。なるほど、はじめてはっきりしたぞ。さあ探せ、恐竜の骨骼だ。恐竜の骨骼だ。」
学士の影《かげ》は
黒く頁岩の上に落ち
大股《おおまた》に歩いていたから
踊《おど》っているように見えた。
海はもの凄《すご》いほど青く
空はそれより又青く
幾《いく》きれかのちぎれた雲が
まばゆくそこに浮いていた。
「おや出たぞ。」
楢《なら》ノ木大学士が叫《さけ》び出した。
その灰いろの頁岩の
平らな奇麗《きれい》な層面に
直径が一|米《メートル》ばかりある
五本指の足あとが
深く喰《く》い込《こ》んでならんでいる。
所々上の岩のために
かくれているが足裏の
皺《しわ》まではっきりわかるのだ。
「さあ、見附《みつ》けたぞ。この足跡《あしあと》の尽《つ》きた所には、きっとこいつが倒《たお》れたまま化石している。巨きな骨だぞ。まず背骨なら二十米はあるだろう。巨きなもんだぞ。」
大学士はまるで雀躍《こおどり》して
その足あとをつけて行く。
足跡はずいぶん続き
どこまで行くかわからない。
それに太陽の光線は赭《あか》く
たいへん足が疲れたのだ。
どうもおかしいと思いながら
ふと気
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