てます。どうか早く診《み》て下さい。」
「はあい、なあにべつだん心配はありません。かぜを引いたのでしょう。」
「ははあ、こいつらは風を引くと腹が痛くなる。それがつまり風化だな。」
大学士は眼鏡《めがね》をはずし
半巾《はんけち》で拭《ふ》いて呟《つぶ》やく。
「プラジョさん。お早くどうか願います。只今《ただいま》気絶をいたしました。」
「はぁい。いまだんだんそっちを向きますから。ようっと。はい、はい。これは、なるほど。ふふん。一寸《ちょっと》脈をお見せ、はい。こんどはお舌、ははあ、よろしい。そして第十八へきかい予備面が痛いと。なるほど、ふんふん、いやわかりました。どうもこの病気は恐《こわ》いですよ。それにお前さんのからだは大地の底に居たときから慢性《まんせい》りょくでい病にかかって大分|軟化《なんか》してますからね、どうも恢復《かいふく》の見込《みこみ》がありません。」
病人はキシキシと泣く。
「お医者さん。私の病気は何でしょう。いつごろ私は死にましょう。」
「さよう、病人が病名を知らなくてもいいのですがまあ蛭石《ひるいし》病の初期ですね、所謂《いわゆる》ふう病の中の一つ。俗にかぜは万
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