くくらい高くなって、まるでそんなこともあったかというような顔をして、銀か白金かの冠ぐらいをかぶって、きちんとすましているのだぞ。」
ラクシャンの第三子は
しばらく考えて云う。
「兄さん、私はどうも、そんなことはきらいです。私はそんな、まわりを熱い灰でうずめて、自分だけ一人高くなるようなそんなことはしたくありません。水や空気がいつでも地面を平らにしようとしているでしょう。そして自分でもいつでも低い方低い方と流れて行くでしょう、私はあなたのやり方よりは、却《かえ》ってあの方がほんとうだと思います。」
暴《あら》っぽいラクシャン第一子が
このときまるできらきら笑った。
きらきら光って笑ったのだ。
(こんな不思議な笑いようを
いままでおれは見たことがない、
愕《おどろ》くべきだ、立派なもんだ。)
楢ノ木学士が考えた。
暴っぽいラクシャンの第一子が
ずいぶんしばらく光ってから
やっとしずまって斯《こ》う云った。
「水と空気かい。あいつらは朝から晩まで、俺《おい》らの耳のそば迄《まで》来て、世界の平和の為《ため》に、お前らの傲慢《ごうまん》を削《けず》るとかなんとか云いながら、毎日こそこそ、俺らを
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