き》包《づつ》みのようにして持って待っていましたが斯う言われたので仕方なく包みを置いてうしろから理助の俵を押してやりました。理助は起きあがって嬉《うれ》しそうに笑って野原の方へ下りはじめました。私も包みを持ってうれしくて何べんも「ホウ。」と叫《さけ》びました。
そして私たちは野原でわかれて私は大威張《おおいば》りで家に帰ったのです。すると兄さんが豆《まめ》を叩《たた》いていましたが笑って言いました。
「どうしてこんな古いきのこばかり取って来たんだ。」
「理助がだって茶いろのがいいって云ったもの。」
「理助かい。あいつはずるさ。もうはぎぼだしも過ぎるな。おれもあしたでかけるかな。」
私は又ついて行きたいと思ったのでしたが次の日は月曜ですから仕方なかったのです。
そしてその年は冬になりました。
次の春理助は北海道の牧場へ行ってしまいました。そして見るとあすこのきのこはほかに誰《たれ》かに理助が教えて行ったかも知れませんがまあ私のものだったのです。私はそれを兄にもはなしませんでした。今年こそ白いのをうんととって来て手柄《てがら》を立ててやろうと思ったのです。
そのうち九月になりまし
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