ありません。僕はその中で、一番威張って歩いてゐるんです。」
「お前の友だちといふのは、どんな人だ。」
「しらみに、くもに、だにです。」
「そんなものと、お前はつきあってゐるのか。なぜもう少し、りっぱなものとつきあはん。なぜもっと立派なものとくらべないか。」
「だって、僕は、猫や、犬や、獅子《しし》や、虎《とら》は、大嫌《だいきら》ひなんです。」
「さうか。それなら仕方ない。が、もう少しりっぱにやって貰《もら》ひたい。」
「もうわかりました。先生。」フウねずみは一目散に逃げて行ってしまひました。
それから又五六日たって、フウねずみが、いそいで鳥箱先生のそばをかけ抜けようとしますと、先生が叫びました。
「おい。フウ。一寸《ちょっと》待ちなさい。なぜお前は、そんなにきょろきょろあたりを見てあるくのです。男はまっすぐに行く方を向いて歩くもんだ。それに決して、よこめなんかはつかふものではない。」
「だって先生。私の友達はみんなもっときょろきょろしてゐます。」
「お前の友だちといふのは誰だ。」
「たとへばくもや、しらみや、むかでなどです。」
「お前は、また、そんなつまらないものと自分をくらべてゐ
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