めはバタバタ云って、手もつけられない子供らばかりだったがね、みんな、間もなく、わしの感化で、おとなしく立派になった。そして、それはそれは、安楽に一生を送ったのだ。栄耀《えいえう》栄華《えいぐわ》をきはめたもんだ。」
 親ねずみは、あんまりうれしくて、声も出ませんでした。そして、ペコペコ頭をさげて、急いで自分の穴へもぐり込んで、子供のフウねずみを連れ出して、鳥箱先生の処へやって参りました。
「この子供でございます。どうか、よろしくおねがひ致します。どうかよろしくおねがひ致します。」二人は頭をぺこぺこさげました。
 すると、先生は、
「ははあ、仲々賢こさうなお子さんですな。頭のかたちが大へんよろしい。いかにも承知しました。きっと教へてあげますから。」
 ある日、フウねずみが先生のそばを急いで通って行かうとしますと、鳥箱先生があわてて呼びとめました。
「おい。フウ。ちょっと待ちなさい。なぜ、おまへは、さう、ちょろちょろ、つまだてしてあるくんだ。男といふものは、もっとゆっくり、もっと大股《おほまた》にあるくものだ。」
「だって先生。僕《ぼく》の友だちは、誰《たれ》だってちょろちょろ歩かない者は
前へ 次へ
全9ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング