るが、それはよろしくない。お前はりっぱな鼠になる人なんだからそんな考はよさなければいけない。」
「だって私の友達は、みんなさうです。私はその中では一番ちゃんとしてゐるんです。」
 そしてフウねずみは一目散に逃げて穴の中へはひってしまひました。
 それから又五六日たって、フウねずみが、いつものとほり、大いそぎで鳥箱先生のそばを通りすぎようとしますと、先生が網のチョッキをがたっとさせながら、呼びとめました。
「おい。フウ、ちょっと待ちなさい。おまへはいつでもわしが何か云はうとすると、早く逃げてしまはうとするが、今日は、まあ、すこしおちついて、こゝへすわりなさい。お前はなぜそんなにいつでも首をちゞめて、せなかを円くするのです。」
「だって、先生。私の友達は、みんな、もっとせなかを円くして、もっと首をちゞめてゐますよ。」
「お前の友達といっても、むかでなどはせなかをすっくりとのばしてあるいてゐるではないか。」
「いゝえ。むかではさうですけれども、ほかの友だちはさうではありません。」
「ほかの友だちといふのは、どんな人だ。」
「けしつぶや、ひえつぶや、おほばこの実などです。」
「なぜいつでも、そ
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