嘴《くちばし》を引っぱられて、逆《さかさ》になって木の中に吸い込《こ》まれるのを見たいらしく、上の方ばかり向いて歩きましたし、私もやはりその通りでしたから、二人はたびたび石につまづいて、倒《たお》れそうになったり又いきなりバチャンと川原の中のたまり水にふみ込んだりもしました。
「どうして今日は斯《こ》う鳥がいないだろう。」
慶次郎は、少し恨《うら》めしいように空を見まわしました。
「みんなその楊の木に吸われてしまったのだろうか。」私はまさかそうでもないとは思いながら斯う言いました。
「だって野原中の鳥が、みんな吸いこまれるってそんなことはないだろう。」慶次郎がまじめに云いましたので私は笑いました。
その時、こっち岸の河原は尽《つ》きてしまって、もっと川を溯るには、どうしてもまた水を渉らなければならないようになりました。
そして水に足を入れたとき、私たちは思わずばあっと棒立ちになってしまいました。向うの楊の木から、まるでまるで百|疋《ぴき》ばかりの百舌《もず》が、一ぺんに飛び立って、一かたまりになって北の方へかけて行くのです。その塊《かたまり》は波のようにゆれて、ぎらぎらする雲の下
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