鳥をとるやなぎ
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)煙山《けむやま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)藤原|慶次郎《けいじろう》
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「煙山《けむやま》にエレッキのやなぎの木があるよ。」
藤原|慶次郎《けいじろう》がだしぬけに私に云《い》いました。私たちがみんな教室に入って、机に座《すわ》り、先生はまだ教員室に寄っている間でした。尋常《じんじょう》四年の二学期のはじめ頃《ごろ》だったと思います。
「エレキの楊《やなぎ》の木?」と私が尋《たず》ね返そうとしましたとき、慶次郎はあんまり短くて書けなくなった鉛筆《えんぴつ》を、一番前の源吉に投げつけました。源吉はうしろを向いて、みんなの顔をくらべていましたが、すばやく机に顔を伏《ふ》せて、両手で頭をかかえてかくれていた慶次郎を見つけると、まるで怒《おこ》り出して
「何するんだい。慶次郎。何するんだい。」なんて高く叫《さけ》びました。みんなもこっちを見たので私も大へんきまりが悪かったのです。その時先生が、鞭《むち》や白墨《はくぼく》や地図を持って入って来られたもんですから、みんなは
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