ら川原は割合に広く、まっ白な砂利《じゃり》でできていて、処々にはひめははこぐさやすぎなやねむなどが生えていたのでしたが、少し上流の方には、川に添《そ》って大きな楊の木が、何本も何本もならんで立っていたのです。私たちはその上流の方の青い楊の木立を見ました。
「どの木だろうね。」
「さあ、どの木だか知らないよ。まあ行って見ようや。鳥が吸い込まれるって云うんだから、見たらわかるだろう。」
私たちはそっちへ歩いて行きました。
そこらの草は、みじかかったのですが粗《あら》くて剛《こわ》くて度々《たびたび》足を切りそうでしたので、私たちは河原に下りて石をわたって行きました。
それから川がまがっているので水に入りました。空が曇《くも》っていましたので水は灰いろに見えそれに大へんつめたかったので、私たちはあまのじゃくのような何とも云えない寂《さび》しい心持がしました。
だんだん溯《のぼ》って、とうとうさっき青いくしゃくしゃの球《たま》のように見えたいちばんはずれの楊の木の前まで来ましたがやっぱり野原はひっそりして音もなかったのです。
「この木だろうか。さっぱり鳥が居ないからわからないねえ。」
前へ
次へ
全11ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング