ずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫のなかに入れて、ぱちんと錠《じょう》をかけました。
すこし行きますとまた扉《と》があって、その前に硝子《がらす》の壺《つぼ》が一つありました。扉には斯《こ》う書いてありました。
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「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」
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みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。
「クリームをぬれというのはどういうんだ。」
「これはね、外がひじょうに寒いだろう。室《へや》のなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。」
二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり顔へ塗るふりをしながら喰べました。
それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、
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「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」
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と書いてあって、
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