どなたもどうかお入りください。決してご遠慮《えんりょ》はありません」
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二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご馳走《ちそう》するんだぜ。」
「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」
二人は戸を押《お》して、なかへ入りました。そこはすぐ廊下《ろうか》になっていました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。
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「ことに肥《ふと》ったお方や若いお方は、大歓迎《だいかんげい》いたします」
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二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキ塗《ぬ》りの扉《と》がありました。
「どうも変な家《うち》だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
そし
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