っきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
「喰《た》べたいもんだなあ」
 二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。
 その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒《いっけん》の西洋造りの家がありました。
 そして玄関《げんかん》には
[#ここから4字下げ、横書き、中央揃え、罫囲み]
RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒
[#ここで字下げ終わり]
という札がでていました。
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」
「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」
 二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸《せと》の煉瓦《れんが》で組んで、実に立派なもんです。
 そして硝子《がらす》の開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。
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