うか空の王様によろしく。私どももいつか許されますようおねがいいたします。」
 二人は一緒《いっしょ》に云いました。
「きっとそう申しあげます。やがて空でまたお目にかかりましょう。」
 竜巻がそろりそろりと立ちあがりました。
「さよなら、さよなら。」
 竜巻はもう頭をまっくろな海の上に出しました。と思うと急にバリバリバリッと烈《はげ》しい音がして竜巻は水と一所に矢のように高く高くはせのぼりました。
 まだ夜があけるのに余程《よほど》間があります。天の川がずんずん近くなります。二人のお宮がもうはっきり見えます。
「一寸《ちょっと》あれをご覧なさい。」と闇《やみ》の中で竜巻が申しました。
 見るとあの大きな青白い光りのほうきぼしはばらばらにわかれてしまって頭も尾も胴も別々にきちがいのような凄《すご》い声をあげガリガリ光ってまっ黒な海の中に落ちて行きます。
「あいつはなまこになりますよ。」と竜巻がしずかに云いました。
 もう空の星めぐりの歌が聞えます。
 そして童子たちはお宮につきました。
 竜巻は二人をおろして
「さよなら、ごきげんよろしゅう」と云いながら風のように海に帰って行きました。
 
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