双子の星
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)天《あま》の川《がわ》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一晩|銀笛《ぎんてき》を

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(例)くびくび[#「くびくび」に傍点]
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   双子の星 一

 天《あま》の川《がわ》の西の岸にすぎなの胞子《ほうし》ほどの小さな二つの星が見えます。あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる小さな水精《すいしょう》のお宮です。
 このすきとおる二つのお宮は、まっすぐに向い合っています。夜は二人とも、きっとお宮に帰って、きちんと座《すわ》り、空の星めぐりの歌に合せて、一晩|銀笛《ぎんてき》を吹《ふ》くのです。それがこの双子のお星様の役目でした。
 ある朝、お日様がカツカツカツと厳《おごそ》かにお身体《からだ》をゆすぶって、東から昇《のぼ》っておいでになった時、チュンセ童子は銀笛を下に置いてポウセ童子に申しました。
「ポウセさん。もういいでしょう。お日様もお昇りになったし、雲もまっ白に光っています。今日は西の野原の泉へ行
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