きませんか。」
 ポウセ童子が、まだ夢中《むちゅう》で、半分|眼《め》をつぶったまま、銀笛を吹いていますので、チュンセ童子はお宮から下りて、沓《くつ》をはいて、ポウセ童子のお宮の段にのぼって、もう一度|云《い》いました。
「ポウセさん。もういいでしょう。東の空はまるで白く燃えているようですし、下では小さな鳥なんかもう目をさましている様子です。今日は西の野原の泉へ行きませんか。そして、風車《かざぐるま》で霧《きり》をこしらえて、小さな虹《にじ》を飛ばして遊ぼうではありませんか。」
 ポウセ童子はやっと気がついて、びっくりして笛を置いて云いました。
「あ、チュンセさん。失礼いたしました。もうすっかり明るくなったんですね。僕《ぼく》今すぐ沓をはきますから。」
 そしてポウセ童子は、白い貝殻《かいがら》の沓をはき、二人は連れだって空の銀の芝原《しばはら》を仲よく歌いながら行きました。
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「お日さまの、
 お通りみちを はき浄《きよ》め、
 ひかりをちらせ あまの白雲。
 お日さまの、
 お通りみちの 石かけを
 深くうずめよ、あまの青雲。」
 そしてもういつか空の泉に来ま
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