いいえ、それどころではございません。王様はこの私の唯《ただ》一人の王でございます。遠いむかしから私めの先生でございます。私はあのお方の愚《おろ》かなしもべでございます。いや、まだおわかりになりますまい。けれどもやがておわかりでございましょう。それでは夜の明けないうちに竜巻にお伴《とも》致《いた》させます。これ、これ。支度《したく》はいいか。」
一|疋《ぴき》のけらいの海蛇が
「はい、ご門の前にお待ちいたして居ります。」と答えました。
二人は丁寧《ていねい》に王にお辞儀をいたしました。
「それでは王様、ごきげんよろしゅう。いずれ改めて空からお礼を申しあげます。このお宮のいつまでも栄えますよう。」
王は立って云いました。
「あなた方もどうかますます立派にお光り下さいますよう。それではごきげんよろしゅう。」
けらいたちが一度に恭々しくお辞儀をしました。
童子たちは門の外に出ました。
竜巻が銀のとぐろを巻いてねています。
一人の海蛇が二人をその頭に載《の》せました。
二人はその角《つの》に取りつきました。
その時赤い光のひとでが沢山出て来て叫《さけ》びました。
「さよなら、ど
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