う。水の中だし、アルキメデス、水の中だし、動く動く。うまく行った。波、これも大丈夫だ。大丈夫。引率の教師が飛石をつくるのもをかしいが又えらい。やっぱりをかしい。ありがたい。うまく行った。
ひとりが渡る。ぐらぐらする。あぶなく渡る、二人がわたる。
もう一つはどれにするかな、もう四人だけ渡ってゐる。飛石の上に両あしを揃《そろ》へてきちんと立って四人つゞいて待ってゐるのは面白い。向ふの河原のを動かさう。影のある石だ。
持てるかな。持てる。けれども一番波の強いところだ。恐らく少し小さいぞ。小さい。波が昆布《こんぶ》だ、越して行く。もう一つ持って来よう。こいつは苔《こけ》でぬるぬるしてゐる。これで二つだ。まだぐらぐらだ。も一つ要る。小さいけれども台にはなる。大丈夫だ。
おれははだしで行かうかな。いゝややっぱり靴ははかう。面倒くさい靴下はポケットへ押し込め、ポケットがふくれて気持ちがいゝぞ。
素あしにゴム靴でぴちゃぴちゃ水をわたる。これはよっぽどいゝことになってゐる。前にも一ぺんどこかでこんなことがあった。去年の秋だ。腐植質《フイウマス》の野原のたまり水だったかもしれない。向ふに黒いみち
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