。五内川《ごないかは》でもないし、何と云ったかな。
けれどもその語《ことば》はよく分ってゐるぞ。よくわかってゐるとも。
巨礫《きょれき》がごろごろしてゐる。一つ欠いて見せるかな。うまくいった。パチンといった。〔これは安山岩です。上流《かみ》の方から流れて来たのです。〕
すっと歩き出せ。関さんだ。「この石は安山岩であります。上流から流れて来たのです。」まねをしてゐる。堀田だな。堀田は赤い毛糸のジャケツを着てゐるんだ。物を言ふ口付きが覚束《おぼつか》なくて眼はどこを見てゐるかはっきりしないで黒くてうるんでゐる。今はそれがうしろの横でちらっと光る。
そこの松林の中から黒い畑が一枚出て来ます。
(あゝ畑も入ります入ります。遊園地には畑もちゃんと入ります)なんて誰《たれ》だったかな、云ってゐた、あてにならない。こんな畑を云ふんだらう。おれのはもっとずっと上流の北上《きたかみ》川から遠くの東の山地まで見はらせるやうにあの小桜山の下の新らしく墾《ひら》いた広い畑を云ったんだ。
「全体どごさ行ぐのだべ。」
「なあに先生さ従《つ》いでさぃ行げばいゝんだぢゃ。」又堀田だな。前の通りだ。うしろで黄い
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