火成岩ですよ。岩脈ですよ。あれは。〕
ゆれてるゆれてる。光の網。
〔この山は流紋凝灰岩でできてゐます。石英粗面岩の凝灰岩、大へん地味が悪いのです。赤松とちひさな雑木しか生えてゐないでせう。ところがそのへん、麓《ふもと》の緩い傾斜のところには青い立派な闊葉《くゎつえふ》樹が一杯生えてゐるでせう。あすこは古い沖積扇です。運ばれて来たのです。割合|肥沃《ひよく》な土壌を作ってゐます。木の生え工合《ぐあひ》がちがって見えませう。わかりませう。〕わかるだらうさ。けれどもみんな黙って歩いてゐる。これがいつでもかうなんだ。さびしいんだ。けれども何でもないんだ。
後ろで誰《たれ》かこゞんで石ころを拾ってゐるものもある。小松ばやしだ。混んでゐる。このみちはずうっと上流まで通ってゐるんだ。造林のときは苗や何かを一杯つけた馬がぞろぞろこゝを行くんだぞ。
〔志戸平《しどたひら》のちかく豊沢川の南の方に杉のよくついた奇麗な山があるでせう。あすことこゝとはとても木の生え工合や較《くら》べにも何にもならないでせう。向ふは安山岩の集塊岩、こっちは流紋凝灰岩です。石灰や加里や植物養料がずうっと少いのです。ここには
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