れてもう狐と一緒に踊ってゐます。
キック、キック、トントン。キック、キック、トントン。キック、キック、キック、キック、トントントン。
四郎が歌ひました。
「狐《きつね》こんこん狐の子、去年狐のこん兵衛《べゑ》が、ひだりの足をわなに入れ、こんこんばたばたこんこんこん。」
かん子が歌ひました。
「狐こんこん狐の子、去年狐のこん助が、焼いた魚を取ろとしておしりに火がつききゃんきゃんきゃん。」
キック、キック、トントン。キック、キック、トントン。キック、キック、キック、キックトントントン。
そして三人は踊りながらだんだん林の中にはひって行きました。赤い封蝋《ふうらふ》細工のほほの木の芽が、風に吹かれてピッカリピッカリと光り、林の中の雪には藍《あゐ》色の木の影がいちめん網になって落ちて日光のあたる所には銀の百合《ゆり》が咲いたやうに見えました。
すると子狐紺三郎が云ひました。
「鹿《しか》の子もよびませうか。鹿の子はそりゃ笛がうまいんですよ。」
四郎とかん子とは手を叩《たた》いてよろこびました。そこで三人は一緒に叫びました。
「堅雪かんこ、凍《し》み雪しんこ、鹿の子ぁ嫁ぃほしいほし
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