さしあげませう。」
と云ひました。
 と四郎が笑って、
「紺三郎さん、僕らは丁度いまね、お餅《もち》をたべて来たんだからおなかが減らないんだよ。この次におよばれしようか。」
 子狐の紺三郎が嬉《うれ》しがってみじかい腕をばたばたして云ひました。
「さうですか。そんなら今度幻燈会のときさしあげませう。幻燈会にはきっといらっしゃい。この次の雪の凍った月夜の晩です。八時からはじめますから、入場券をあげて置きませう。何枚あげませうか。」
「そんなら五枚お呉《く》れ。」と四郎が云ひました。
「五枚ですか。あなた方が二枚にあとの三枚はどなたですか。」と紺三郎が云ひました。
「兄さんたちだ。」と四郎が答へますと、
「兄さんたちは十一歳以下ですか。」と紺三郎が又尋ねました。
「いや小兄《ちひにい》さんは四年生だからね、八つの四つで十二歳。」と四郎が云ひました。
 すると紺三郎は尤《もっと》もらしく又おひげを一つひねって云ひました。
「それでは残念ですが兄さんたちはお断わりです。あなた方だけいらっしゃい。特別席をとって置きますから、面白いんですよ。幻燈は第一が『お酒をのむべからず。』これはあなたの村の太
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