んこん狐の子、狐の団子は兎《うさ》のくそ。」
すると小狐紺三郎が笑って云ひました。
「いゝえ、決してそんなことはありません。あなた方のやうな立派なお方が兎《うさぎ》の茶色の団子なんか召しあがるもんですか。私らは全体いままで人をだますなんてあんまりむじつの罪をきせられてゐたのです。」
四郎がおどろいて尋ねました。
「そいぢゃきつねが人をだますなんて偽《うそ》かしら。」
紺三郎が熱心に云ひました。
「偽ですとも。けだし最もひどい偽です。だまされたといふ人は大抵お酒に酔ったり、臆病でくるくるしたりした人です。面白いですよ。甚兵衛《じんべゑ》さんがこの前、月夜の晩私たちのお家《うち》の前に坐って一晩じゃうるりをやりましたよ。私らはみんな出て見たのです。」
四郎が叫びました。
「甚兵衛さんならじゃうるりぢゃないや。きっと浪花《なには》ぶしだぜ。」
子狐紺三郎はなるほどといふ顔をして、
「えゝ、さうかもしれません。とにかくお団子をおあがりなさい。私のさしあげるのは、ちゃんと私が畑を作って播《ま》いて草をとって刈って叩《たた》いて粉にして練ってむしてお砂糖をかけたのです。いかゞですか。一皿
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