の木は枝も埋《うづ》まるくらゐ立派な透きとほった氷柱《つらら》を下げて重さうに身体《からだ》を曲げて居《を》りました。
「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。狐《きつね》の子ぁ、嫁《よめ》ぃほしい、ほしい。」と二人は森へ向いて高く叫びました。
しばらくしいんとしましたので二人はも一度叫ばうとして息をのみこんだとき森の中から
「凍み雪しんしん、堅雪かんかん。」と云《い》ひながら、キシリキシリ雪をふんで白い狐の子が出て来ました。
四郎は少しぎょっとしてかん子をうしろにかばって、しっかり足をふんばって叫びました。
「狐こんこん白狐、お嫁ほしけりゃ、とってやろよ。」
すると狐がまだまるで小さいくせに銀の針のやうなおひげをピンと一つひねって云ひました。
「四郎はしんこ、かん子はかんこ、おらはお嫁はいらないよ。」
四郎が笑って云ひました。
「狐こんこん、狐の子、お嫁がいらなきゃ餅《もち》やろか。」
すると狐の子も頭を二つ三つ振って面白さうに云ひました。
「四郎はしんこ、かん子はかんこ、黍《きび》の団子をおれやろか。」
かん子もあんまり面白いので四郎のうしろにかくれたまゝそっと歌ひました。
「狐こ
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