を二つ三つのんだ。それから横《よこ》からじっとおみちを見るとまだ泣きたいのを無理《むり》にこらえて口をびくびくしながらぼんやり眼《め》を赤くしているのが酔《よ》った狸《たぬき》のようにでも見えた。嘉吉は矢もたてもたまらず俄《にわ》かにおみちが可哀《かわい》そうになってきた。
嘉吉はじっと考えた。おみちがさっきのあの顔いろはこっちの邪推《じゃすい》かもしれない。
及《およ》びもしないあんな男をいきなり一言《ひとこと》二言はなしてそんなことを考えるなんてあることでない。そうだとするとおれがあんな大学生とでも引け目なしにぱりぱり談《はな》した。そのおれの力を感《かん》じていたのかも知れない。それにおれには鉱夫《こうふ》どもにさえ馬鹿《ばか》にはされない肩《かた》や腕《うで》の力がある。あんなひょろひょろした若造《わかぞう》にくらべては何と云《い》ってもおみちにはおれのほうが勝《か》ち目《め》がある。
(おみち、ちょっとこさ来《こ》。)嘉吉《かきち》が云《い》った。
おみちはだまって来て首を垂《た》れて座《すわ》った。
(うなまるで冗談《じょうだん》づごと判《わが》らなぃで面白《おもしろ
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