いたので木のことではいちばん明るかった。そして冬|撰鉱《せんこう》へ来ていたこの村の娘《むすめ》のおみちと出来てからとうとうその一本|調子《ちょうし》で親たちを納得《なっとく》させておみちを貰《もら》ってしまった。親たちは鉱山から少し離《はな》れてはいたけれどもじぶんの栗《くり》の畑《はたけ》もわずかの山林もくっついているいまのところに小屋をたててやった。そしておみちはそのわずかの畑に玉蜀黍《とうもろこし》や枝豆《えだまめ》やささげも植《う》えたけれども大抵《たいてい》は嘉吉を出してやってから実家《じっか》へ手伝《てつだ》いに行った。そうしてまだ子供《こども》がなく三年|経《た》った。
 嘉吉は小屋へ入った。
(お前さま今夜ほうのきさ仏《ほとけ》さん拝《おが》みさ行ぐべ。)おみちが膳《ぜん》の上に豆《まめ》の餅《もち》の皿《さら》を置《お》きながら云《い》った。(うん、うな行っただがら今年ぁいいだなぃがべが。)嘉吉が云った。
(そだら踊《おど》りさでも出はるますか。)俄《にわ》かにぱっと顔をほてらせながらおみちは云った。(ふん見さ行ぐべさ。)嘉吉はすこしわらって云った。膳ができた。いく
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