ました。
「アッハッハ、ばさん。天の邪鬼の小便ぁたまげだ永ぃな。」
「永ぃてさ、天の邪鬼ぁいっつも小便、垂れ通しさ。」とおばあさんはすまして云いながら又《また》豆を抜きました。嘉ッコは呆《あき》れてぼんやりとむしろに座りました。
 お日さまはうすい白雲にはいり、黒い鳥が高く高く環《わ》をつくっています。その雲のこっち、豆の畑の向うを、鼠色《ねずみいろ》の服を着て、鳥打をかぶったせいのむやみに高い男が、なにかたくさん肩にかついで大股《おおまた》に歩いて行きます。
「兵隊さん。」善コが叫びながらそっちへかけ出しました。
「兵隊さ※[#小書き平仮名ん、150−3]だなぃ。鉄砲《てっぽう》持ってなぃぞ。」嘉ッコも走りながら云いました。
「兵隊さん。」善コが又叫びました。
「兵隊さんだなぃ。鉄砲持ってなぃぞ。」けれどもその時は二人はもう旅人の三間ばかりこっちまで来ていました。
「兵隊さん。」善コは又叫んでからおかしな顔をしてしまいました。見るとその人は赤ひげで西洋人なのです。おまけにその男が口を大きくして叫びました。
「グルルル、グルウ、ユー、リトル、ラズカルズ、ユー、プレイ、トラウント、ビ、オ
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