ッフ、ナウ、スカッド、アウエイ、テゥ、スクール。」
 と雷《かみなり》のような声でどなりました。そこで二人はもうグーとも云わず、まん円になって一目散に逃《に》げました。するとうしろではいかにも面白《おもしろ》そうに高く笑う声がします。向うの方ではお母さんたちが心配そうに手をかざしてこっちを見ていましたが、やがて一寸おじぎをしました。二人は振《ふ》り返って見ますとその鼠色の旅人も笑いながら帽子《ぼうし》をとっておじぎをして居《お》りました。そして又大股に向うに歩いて行ってしまいました。
 お日さまが又かっと明るくなり、二人はむしろに座ってひばりもいないのに、
「ひばり焼げこ、ひばりこんぶりこ、」なんて出鱈目《でたらめ》なひばりの歌を歌っていました。
 そのうちに嘉ッコがふと思い出したように歌をやめて、一寸顔をしかめましたが、俄かに云いました。
「じゃ、うなぃの爺《じ》※[#小書き平仮名ん、151−2]ごぁ、酔ったぐれだが。」
「うんにゃ、おれぁの爺※[#小書き平仮名ん、151−3]ごぁ酔ったぐれだなぃ。」善コが答えました。
「そだら、うなぃの爺※[#小書き平仮名ん、151−4]ごど俺ぁの
前へ 次へ
全13ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング