、おれぁの家さ降った。うなぃの家さ降ったが。」善コが云ひました。
「うん、降った。」
それから二人は善コのお母さんが持って来た蓆《むしろ》の上に座りました。お母さんたちはうしろで立って談《はな》してゐます。
二人はむしろに座って、
「わあああああああああ。」と云ひながら両手で耳を塞《ふさ》いだりあけたりして遊びました。ところが不思議なことは、「わああああん[#「ん」は小書き]ああああ。」と云はないでも、両手で耳を塞いだりあけたりしますと、
「カーカーココーコー、ジャー。」といふ水の流れるやうな音が聞えるのでした。
「ぢゃ、汝《うな》、あの音ぁ何の音だが覚《おべ》だが。」
と嘉ッコが云ひました。善コもしばらくやって見てゐましたが、やっぱりどうしてもそれがわからないらしく困ったやうに、
「奇体だな。」と云ひました。
その時丁度嘉ッコのお母さんが畦《あぜ》の向ふの方から豆を抜きながらだんだんこっちへ来ましたので、嘉ッコは高く叫びました。
「母《があ》、かう云《ゆ》にしてガアガアど聞えるものぁ何だべ。」
「西根山《にしねやま》の滝の音さ。」お母さんは豆の根の土をばたばた落しながら云ひま
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