ぢと始終ご一緒して居りあん[#「ん」は小書き]す。」純哉さんの妹は唇《くちびる》が紫で心臓が悪かった。この人も少し紫だ。
「はあそでござんすか。」この人の鼻はけはしくて写楽のやうに見えるけれどもどこか立派なところもある。
「それがらおうぢのあねさんおあん[#「ん」は小書き]ばぃ悪ぃふでごぁんすたなぢょでお出ゃんすべなす。」
「はあ、あんまり変らなござんす。」
「おりゃの米子《よねこ》どもいっつもお話し申してあん[#「ん」は小書き]す。」
ありがたう。そんなにほかの人までが考へてゐてくれるのかな、おれでさへ昼学校では大抵まぎれて忘れてゐるのだ。
「ほんとにおありがどござんす。」おじぎをしたのでこの人はもう行かうとする。いまはお礼を云ったのだ。もう一ぺん云はう。
「ほんたうにおありがどござんす。暖ぐなったらど思ってゐあん[#「ん」は小書き]すたどもやっぱりその通りで善《ゆ》ぐもならなぃで。」
「まぁんつたびだび米子どもお話してあん[#「ん」は小書き]すすか。」
「おありがどござんす。」
「おありがどござんす。」
汽車はのぼって来るのぼって来ると子供が云ってゐる。人は影と一緒に向ふへ行く
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