の格子からちらっとこっちを見たかもしれない。けれどもどうも仕方ない。あすこの池で魚を釣ってゐるのは虎戸の弟だ。たしかにさうだ。
立派だ。この雲のひかり Sun−beam がまさしく今日もそゝいでゐる。
雲は陽《ひ》を濾《こ》す、雲は陽を濾すとしようかな、白秋にそんな調子がある。
向ふから女の人と子供がやって来る。みたやうな人だ。純哉《じゅんや》さんのうちの人だ。知らない風で行かうか。何か云ひさうだ。とまる。
云ふ云ふ。
「まんつ見申したよだど思ったへば豊沢小路《としゃこうぢ》のあぃなさんでお出ゃん[#「ん」は小書き]すた。おまめしござんしたすか。」この人がこんなに云ってくれるとは思はなかった。けれども×××××××××××××××××××××とき××××××××××××××××なんだ。
「はあ、おありがどござんす。お蔭でまめしくて居《を》りあん[#「ん」は小書き]す。」純哉さんもおまめしくてと云はうかな、いや家から出てどこへ行ったかわからなかったと云ふんだ。この辺を夕方しょんぼり行ったり来たりしてゐたのを見た人もあると云った。台湾、やっぱり云はない方がいゝ。
「お内のお母さんだ
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