黄ばらのひかり、すぎなと砂利。
 これはレールだ。
 それから影だ。手帳。
 ゆっくり行けば朝のレールは白くひかる。強くて白くかゞやく、
 子供のうすい影法師、私は線路の砂利も見る。
 ごくあたり前だがぬれてるやうな気もします。
 工夫がうしろからいそいで通りこす。横目でこっちを見ながら行く。少し冷笑してゐるらしい。それでもずんずん行ってしまふ。万法流転。流れと早さ。も一人あとから誰《たれ》か来る。うしろから手帳をのぞき込まうとするのか。それでも一向|差支《さしつか》へはない。やっぱり工夫だ。ところが向ふのあの人は工夫ではなかったんだな。大工か何かだったな、どてをのぼって草をこいで行ってしまふ。
 この横が土木の似鳥さんの泊ってゐる家だ。女もゐる。そのうちの前で手帳なんかをひろげたって一向気取ったわけぢゃない。
(紙の白と直立。)
 一向気取ったわけぢゃない。しなければならなくてしてゐるんだ。けれどももしこれがしんとした蒼黝《あをぐろ》い空間でならば全くどんなにいいだらう。それでも仕方ない。
 低い崖《がけ》と草。草。東の雲はまっ白でぎらぎら光る。
 虎戸《とらと》の家だ。虎戸があすこ
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