は何だかもくもくして、ゴムのやうでした。
 達二のうちは、いつか野原のまん中に建ってゐます。急いで籠《かご》を開けて、小鳥を、そっとつかみました。そして引っ返さうとしましたら、
「達二、どこさ行く。」と達二のおっかさんが云ひました。
「すぐ来るがら。」と云ひながら達二は鳥を見ましたら、鳥はいつか、萌黄《もえぎ》色の生菓子に変ってゐました。やっぱり夢でした。
 風が吹き、空が暗くて銀色です。
「伊佐戸《いさど》の町の電気工夫のむすこぁ、ふら、ふら、ふら、ふら、ふら、」とどこかで云ってゐます。
 それからしばらく空がミインミインと鳴りました。達二は又うとうとしました。
 山男が楢《なら》の木のうしろからまっ赤な顔を一寸《ちょっと》出しました。
(なに怖いことがあるもんか。)
「こりゃ、山男。出はって来《こ》。切ってしまふぞ。」達二は脇差《わきざ》しを抜いて身構へしました。
 山男がすっかり怖がって、草の上を四つん這《ば》ひになってやって来ます。髪が風にさらさら鳴ります。
「どうか御免《ごめ》御免《ごめ》。何《な》じょなことでも為《さ》んす。」
「うん。そんだら許してやる。蟹《かに》を百疋捕
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