。もし、ぜんたい、してしまはなかった人があっても、やはりその儘《まま》、持って来るのです。すっかりしてしまはなかった人は手をあげて。」
 誰も上げません。
「さうです。皆さんは立派な生徒です。休み中、みなさんは何をしましたか。そのうちで一番面白かったことは何ですか。達二さん。」
「おぢいさんと仔馬を集めに行ったときです。」
「よろしい。大へん結構です。楢夫さん。あなたはお休みの間に、何が一番楽しかったのですか。」
「剣舞《けんばひ》です。」
「剣舞をあなたは踊ったのですか。」
「さうです。」
「どこでですか。」
「伊佐戸《いさど》やあちこちです。」
「さうですか。まあよろしい。お座りなさい。みなさん。外にも剣舞に出た人はありますか。」
「先生、私も出ました。」
「先生、私も出ました。」
「達二さんも、さうですか。よろしい。みなさん。剣舞は決して悪いことではありません。けれども、勿論《もちろん》みなさんの中にそんな方はないでせうが、それでお銭《あし》を貰《もら》ったりしてはなりません。みなさんは、立派な生徒ですから。」
「先生。私はお銭を貰ひません。」
「よろしい。さうです。それから……
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