ハーシュはわらひました。
すると子供は少し機嫌《きげん》の悪い顔をしてゐましたがハーシュがすぐそのそばまで行きましたら俄《には》かに子供が叫びました。
「僕、車へのせてってお呉れ。」
ハーシュはとまりました。
「この車がたがたしますよ。よござんすか。坊ちゃん。」
「がたがたしたって僕ちっともこはくない。」こどもが大威張りで云ひました。
「そんならお乗りなさい。よおっと。そら。しっかりつかまっておいでなさい。鉄砲は前へ置いて。そら、動きますよ。」ハーシュはうしろを見ながら車をそろそろ引っぱりはじめました。子供は思ったよりも車ががたがたするので唇《くちびる》をまげてやっぱり少し怖いやうでした。それでも一生けん命つかまってゐました。ハーシュはずんずん車を引っぱりました。みちがだんだんせまくなって車の輪はたびたび道のふちの草の上を通りました。そのたびに車はがたっとゆれました。子供は一生けん命車にしがみついてゐました。みちはだんだんせまくなってまん中だけが凹《へこ》んで来ました。ハーシュは車をとめてこどもをふりかへって見ました。
「雀《すずめ》とってお呉れ。」こどもが云ひました。
「今に向ふ
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