し》でふんだりしました。嘉十《かじふ》の手拭《てぬぐひ》はかあいさうに泥《どろ》がついてところどころ穴《あな》さへあきました。
そこで鹿《しか》のめぐりはだんだんゆるやかになりました。
「おう、こんだ団子《だんご》お食《く》ばがりだぢよ。」
「おう、煮《に》だ団子だぢよ。」
「おう、まん円《まる》けぢよ。」
「おう、はんぐはぐ。」
「おう、すつこんすつこ。」
「おう、けつこ。」
鹿《しか》はそれからみんなばらばらになつて、四方《しはう》から栃《とち》のだんごを囲《かこ》んで集《あつ》まりました。
そしていちばんはじめに手拭《てぬぐひ》に進《すゝ》んだ鹿《しか》から、一口《ひとくち》づつ団子《だんご》をたべました。六|疋《ぴき》めの鹿《しか》は、やつと豆粒《まめつぶ》のくらゐをたべただけです。
鹿《しか》はそれからまた環《わ》になつて、ぐるぐるぐるぐるめぐりあるきました。
嘉十《かじふ》はもうあんまりよく鹿《しか》を見《み》ましたので、じぶんまでが鹿《しか》のやうな気《き》がして、いまにもとび出《だ》さうとしましたが、じぶんの大《おほ》きな手《て》がすぐ眼《め》にはいりましたの
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