はみなぴよんぴよん跳《と》びあがりました。
「おう、うまい、うまい、そいづさい取《と》つてしめば、あどは何《なん》つても怖《お》つかなぐない。」
「きつともて、こいづあ大きな蝸牛《なめくづら》の旱《ひ》からびだのだな。」
「さあ、いゝが、おれ歌《うだ》うだうはんてみんな廻《ま》れ。」
 その鹿《しか》はみんなのなかにはいつてうたひだし、みんなはぐるぐるぐるぐる手拭《てぬぐひ》をまはりはじめました。
「のはらのまん中《なか》の めつけもの
 すつこんすつこの 栃《とち》だんご
 栃《とち》のだんごは   結構《けつこう》だが
 となりにいからだ ふんながす
 青《あを》じろ番兵《ばんぺ》は   気《き》にかがる。
  青《あお》じろ番兵《ばんぺ》は   ふんにやふにや
 吠《ほ》えるもさないば 泣《な》ぐもさない
 瘠《や》せで長《なが》くて   ぶぢぶぢで
 どごが口《くぢ》だが   あだまだが
 ひでりあがりの  なめぐぢら。」
 走《はし》りながら廻《まは》りながら踊《おど》りながら、鹿《しか》はたびたび風《かぜ》のやうに進《すゝ》んで、手拭《てぬぐひ》を角《つの》でついたり足《あ
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