。」なんて途方《とほう》もない声で咆《ほ》えはじめました。さあみんなはだんだん気味悪《きみわる》くなりました。おまけに給仕《きゅうじ》がテーブルのはじの方で新らしいお酒の瓶《びん》を抜《ぬ》いたときなどは山男は手を長くながくのばして横《よこ》から取《と》ってしまってラッパ呑みをはじめましたのでぶるぶるふるえ出した人もありました。そこで研究会《けんきゅうかい》の会長さんは元来《がんらい》おさむらいでしたから考えました。(これはどうもいかん。けしからん。こうみだれてしまっては仕方《しかた》がない。一つひきしめてやろう。)くだものの出たのを合図《あいず》に会長さんは立ちあがりました。けれども会長さんももうへろへろ酔《よ》っていたのです。
「ええ一寸《ちょっと》一言ご挨拶《あいさつ》申《もう》しあげます。今晩《こんばん》はお客様《きゃくさま》にはよくおいで下さいました。どうかおゆるりとおくつろぎ下さい。さて現今《げんこん》世界《せかい》の大勢《たいせい》を見るに実《じつ》にどうもこんらんしている。ひとのものを横合《よこあい》からとるようなことが多い。実にふんがいにたえない。まだ世界は野蛮《やば
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