ん》からぬけない。けしからん。くそっ。ちょっ。」
会長さんはまっかになってどなりました。みんなはびっくりしてぱくぱく会長さんの袖《そで》を引っぱって無理《むり》に座《すわ》らせました。
すると山男は面倒臭《めんどうくさ》そうにふところから手を出して立ちあがりました。「ええ一寸《ちょっと》一言ご挨拶を申し上げます。今晩《こんばん》はあついおもてなしにあずかりまして千万《せんばん》かたじけなく思います。どういうわけでこんなおもてなしにあずかるのか先刻《せんこく》からしきりに考えているのです。やはりどうもその先頃《さきごろ》おたずねにあずかった紫紺《しこん》についてのようであります。そうしてみると私も本気で考え出さなければなりません。そう思って一生懸命《いっしょうけんめい》思い出しました。ところが私は子供《こども》のとき母が乳《ちち》がなくて濁《にご》り酒《ざけ》で育《そだ》ててもらったためにひどいアルコール中毒《ちゅうどく》なのであります。お酒を呑《の》まないと物《もの》を忘《わす》れるので丁度《ちょうど》みなさまの反対《はんたい》であります。そのためについビールも一本|失礼《しつれい
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