紫紺染について
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)盛岡《もりおか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)東京|大博覧会《だいはくらんかい》
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 盛岡《もりおか》の産物《さんぶつ》のなかに、紫紺染《しこんぞめ》というものがあります。
 これは、紫紺という桔梗《ききょう》によく似《に》た草の根《ね》を、灰《はい》で煮出《にだ》して染《そ》めるのです。
 南部《なんぶ》の紫紺染は、昔《むかし》は大へん名高いものだったそうですが、明治《めいじ》になってからは、西洋《せいよう》からやすいアニリン色素《しきそ》がどんどんはいって来ましたので、一向《いっこう》はやらなくなってしまいました。それが、ごくちかごろ、またさわぎ出されました。けれどもなにぶん、しばらくすたれていたものですから、製法《せいほう》も染方《そめかた》も一向わかりませんでした。そこで県工業会《けんこうぎょうかい》の役員《やくいん》たちや、工芸《こうげい》学校の先生は、それについていろいろしらべました。そしてとうとう、すっかり昔のようないいものが出来るようになって、東京|大
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