博覧会《だいはくらんかい》へも出ましたし、二等賞《にとうしょう》も取《と》りました。ここまでは、大てい誰《だれ》でも知っています。新聞にも毎日出ていました。
ところが仲々《なかなか》、お役人方《やくにんがた》の苦心《くしん》は、新聞に出ているくらいのものではありませんでした。その研究中《けんきゅうちゅう》の一つのはなしです。
工芸《こうげい》学校の先生は、まず昔《むかし》の古い記録《きろく》に眼《め》をつけたのでした。そして図書館《としょかん》の二|階《かい》で、毎日黄いろに古びた写本《しゃほん》をしらべているうちに、遂《つい》にこういういいことを見附《みつ》けました。
「一、山男《やまおとこ》紫紺《しこん》を売りて酒《さけ》を買い候《そうろう》事《こと》、
山男、西根山《にしねやま》にて紫紺の根《ね》を掘《ほ》り取《と》り、夕景《ゆうけい》に至《いた》りて、ひそかに御城下《ごじょうか》(盛岡《もりおか》)へ立ち出《い》で候《そうろう》上《うえ》、材木町《ざいもくちょう》生薬商人《きぐすりしょうにん》近江屋源八《おうみやげんぱち》に一俵《いっぴょう》二十五|文《もん》にて売り候《そ
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