に延びたんだらう。おまけにさきをくるっと曲げると、まるでおれのステッキの柄のやうになる。」
「はい。それは全く仰《おほ》せの通りでございます。耳や足さきなんかはがさがさして少し汚なうございます。」
「さうだ。汚いとも。耳はボロボロの麻のはんけち或《あるい》は焼いたするめのやうだ。足さきなどはことに見られたものでない。まるで乾いた牛の糞《くそ》だ。」
「いや、さう仰《お》っしゃってはあんまりでございます。それでお名前を何と云はれましたでございませうか。」
「象だ。」
「いまはどちらにおいででございませうか。」
「俺《おれ》は象の弟子でもなければ貴様の小使ひでもないぞ。」
「はい、失礼をいたしました。それではこれでご免を蒙《かうむ》ります。」
「行け行け。」白熊《しろくま》は頭を掻《か》きながら一生懸命向ふへ走って行きました。象はいまごろどこかで赤い蛇《じゃ》の目の傘《かさ》をひろげてゐる筈《はず》だがとわたくしは思ひました。
ところが獅子《しし》は白熊のあとをじっと見送って呟《つぶ》やきました。
「白熊め、象の弟子にならうといふんだな。頭の上の方がひらたくていゝ弟子になるだらうよ。」そ
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