「天上へなんか行かなくたつていいぢやないか。ぼくたちここで天上よりももつといいとこをこさへなけあいけないつて僕の先生が云つたよ。」
「だつてお母さんも行つてらつしやるし、それに神さまも仰つしやるんだわ。」
「そんな神さまうその神さまだい。」
「あなたの神さまうその神さまよ。」
「さうぢやないよ。」
「あなたの神さまつてどんな神さまですか。」
 青年は笑ひながら云ひました。
「ぼくほんたうはよく知りません。けれどもそんなんでなしに、ほんたうのたつた一人の神さまです。」
「ほんたうの神さまはもちろんたつた一人です。」
「ああ、そんなんでなしにたつたひとりのほんたうのほんたうの神さまです。」
「だからさうぢやありませんか。わたくしはあなた方がいまにそのほんたうの神さまの前に、わたくしたちとお會ひになることを祈ります。」青年はつつましく兩手を組みました。
 女の子もちやうどその通りにしました。みんなほんたうに別れが惜しさうで、その顏いろも少し青ざめて見えました。ジヨバンニはあぶなく聲をあげて泣き出さうとしました。
「さあもう支度はいいんですか。ぢきサウザンクロスですから。」
 ああそのとき
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