れました。
ジヨバンニはぢつと天の川を見ながら考へました。
(ぼくはもう、遠くへ行つてしまひたい。みんなからはなれて、どこまでもどこまでも行つてしまひたい。それでももしもカムパネルラが、ぼくといつしよに來てくれたら、そして二人で、野原やさまざまの家をスケツチしながら、どこまでもどこまでも行くのなら、どんなにいいだらう。カムパネルラは決してぼくを怒つてゐないのだ。そしてぼくは、どんなに友だちがほしいだらう。ぼくはもう、カムパネルラが、ほんたうにぼくの友だちになつて、決してうそをつかないなら、ぼくは命でもやつてもいい。けれどもさう云はうと思つても、いまはぼくはそれをカムパネルラに云へなくなつてしまつた。一緒に遊ぶひまだつてないんだ。ぼくはもう、空の遠くの遠くの方へ、たつた一人で飛んで行つてしまひたい。)
ジヨバンニは町のはづれから遠く黒くひろがつた野原を見わたしました。そこから汽車の音が聞えてきました。その小さな列車の窓は一列小さく赤く見え、その中にはたくさんの旅人が、苹果を剥いたり、わらつたり、いろいろな風にしてゐると考へますと、ジヨバンニは、もう何とも云へずかなしくなつて、また眼を
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