りふだんよりも低く連つて見えました。
ジヨバンニは、もう露の降りかかつた小さな林のこみちをどんどんのぼつて行きました。まつくらな草や、いろいろな形に見えるやぶのしげみの間を、その小さなみちが、一すじ白く星あかりに照らしだされてあつたのです。草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな蟲もゐて、ある葉は青くすかし出され、ジヨバンニは、さつきみんなの持つて行つた烏瓜のあかりのやうだとも思ひました。
そのまつ黒な、松や楢の林を越えると、俄かにがらんと空がひらけて、天の川がしらじらと南から北へ亙つてゐるのが見え、また頂の、天氣輪の柱も見わけられたのでした。つりがねさうか野ぎくかの花が、そこらいちめんに、夢の中からでも薫りだしたといふやうに咲き、鳥が一疋、丘の上を鳴き續けながら通つて行きました。
ジヨバンニは、頂の天氣輪の柱の下に來て、どかどかするからだを、つめたい草に投げました。
町の灯は、暗の中をまるで海の底のお宮のけしきのやうにともり、子供らの歌ふ聲や口笛、きれぎれの叫び聲もかすかに聞えて來るのでした。風が遠くで鳴り、丘の草もしづかにそよぎ、ジヨバンニの汗でぬれたシヤツもつめたく冷やさ
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