がぼんやり言《い》いました。
「僕《ぼく》たちしっかりやろうねえ」ジョバンニが胸《むね》いっぱい新しい力が湧《わ》くように、ふうと息《いき》をしながら言《い》いました。
「あ、あすこ石炭袋《せきたんぶくろ》だよ。そらの孔《あな》だよ」カムパネルラが少しそっちを避《さ》けるようにしながら天の川のひととこを指《ゆび》さしました。
 ジョバンニはそっちを見て、まるでぎくっとしてしまいました。天の川の一とこに大きなまっくらな孔《あな》が、どおんとあいているのです。その底《そこ》がどれほど深《ふか》いか、その奥《おく》に何があるか、いくら眼《め》をこすってのぞいてもなんにも見えず、ただ眼《め》がしんしんと痛《いた》むのでした。ジョバンニが言《い》いました。
「僕《ぼく》もうあんな大きな暗《やみ》の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕《ぼく》たちいっしょに進《すす》んで行こう」
「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集《あつ》まってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっ、あすこにいるのはぼくのお母さんだよ」
 カ
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