行くんだい」
ジョバンニがこらえかねて言《い》いました。
「僕《ぼく》たちといっしょに乗《の》って行こう。僕《ぼく》たちどこまでだって行ける切符《きっぷ》持《も》ってるんだ」
「だけどあたしたち、もうここで降《お》りなけぁいけないのよ。ここ天上へ行くとこなんだから」
女の子がさびしそうに言《い》いました。
「天上へなんか行かなくたっていいじゃないか。ぼくたちここで天上よりももっといいとこをこさえなけぁいけないって僕《ぼく》の先生が言《い》ったよ」
「だっておっ母《か》さんも行ってらっしゃるし、それに神《かみ》さまがおっしゃるんだわ」
「そんな神《かみ》さまうその神《かみ》さまだい」
「あなたの神《かみ》さまうその神《かみ》さまよ」
「そうじゃないよ」
「あなたの神《かみ》さまってどんな神《かみ》さまですか」青年は笑《わら》いながら言《い》いました。
「ぼくほんとうはよく知りません。けれどもそんなんでなしに、ほんとうのたった一人《ひとり》の神《かみ》さまです」
「ほんとうの神《かみ》さまはもちろんたった一人《ひとり》です」
「ああ、そんなんでなしに、たったひとりのほんとうのほんとうの
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